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名だたる女性作家に訳されてきた『源氏物語』 紫式部の「身分や立場を飛び越えて想像しようとする力」は今なお私たちを魅了する

『源氏物語』は与謝野晶子や瀬戸内寂聴さんら、様々な女性作家に訳されてきた(写真/AFLO、時事通信フォト)

『源氏物語』は与謝野晶子や瀬戸内寂聴さんら、様々な女性作家に訳されてきた(写真/AFLO、時事通信フォト)

 今年の大河ドラマは日本最古のベストセラー女流作家・紫式部にスポットがあたる。千年前に生み出された代表作『源氏物語』は、名だたる女性作家たちの手で現代語に訳されてきた。女性作家たちは作品のどこにひかれたのか──。【全3回の第3回。第1回から読む

 与謝野晶子、円地文子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、林真理子、角田光代──千年前に生み出されて以来、『源氏物語』は数多の名だたる女性作家たちに訳されてきた。

「紫式部は私の12才の時からの恩師である」

 そう述べ2度に及ぶ現代語訳を行った与謝野晶子をはじめとして彼女たちはみな、源氏物語を通して紫式部と向き合い、作家として、またひとりの女性として多くの学びを得てきたのだ。

 がんで子宮を摘出するなど多くの病気を抱えた円地文子さんは、60才を過ぎてから死に物狂いで訳に取り組み、瀬戸内寂聴さんは源氏訳をするためのマンションを購入し、「守ってもらうために」歴代の恋人の写真を部屋にずらりと貼って人生を懸けて大仕事に挑んだ。

『源氏物語』を大胆に読み解き、大ロマン長編として現代によみがえらせた『新源氏物語』を書いた作家の故・田辺聖子さんもまたそのひとりだった。田辺さんの姪の田辺美奈さんはこう語る。

「伯母は戦時中に防空壕の中で『源氏物語に出てくる登場人物で誰が好き?』という会話を友人たちと交わして戦争を生き抜いたので、私たちが教科書などから得た印象より深いところで物語の面白さを、身をもって感じていたはずです」(美奈さん)

 田辺さんは、過去の寄稿文で『源氏物語』を「後世への大きな贈り物」として高く評価し、続けてこう書いた。

《一番大きな贈り物は、その人の一生においてつき合えるということかもしれませんね。私のようにもうすぐ80才になろうとする人間でもやっぱり源氏は新しい。年取るにしたがって新しい発見があるという、そんな作品はほかにないし、世界中探してもないかもしれません》

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