そもそも厚生年金の保険料は加入者と勤め先とで折半されているため、国民年金の納付期間が延長されたところで、大きな影響はない。その上、厚生年金加入者は当然、その分受給額も多くなる。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが言う。
「厚生年金は1年間で年収の0.55%ほど上乗せされるので、仮に年収300万円なら1年働くと年額約1万6500円増える。年金を70才から87才まで17年間受け取る場合、年金の支給額は28万円増えます」
つまり、厚生年金に加入している会社員や公務員だけが得をし、専業主婦と自営業者は損をする仕組みなのだ。
こうした年金制度の改定は、ひとえに少子高齢化により、将来的に同水準での国民年金を支給できなくなることを危惧してのこと。若者が減り、高齢者人口が増え続けている以上、今後も改定は続く可能性があると、マネーコンサルタントの頼藤太希さんが言う。
「そもそも年金は将来の自分のために積み立てているわけではなく、いま年金を払っている現役世代が、いま年金を受け取っている世代の分を担っている『賦課方式』です。現役世代がいる限り〝年金がもらえなくなる〟ということは起こり得ませんが、少子化・長生き時代に合わせて、今後も年金制度が調整されていく可能性は高いでしょう」(頼藤さん)
“専業主婦いじめ”ともいわれる改定案も
つまり、いま以上に少子高齢化が進めば、もっと大がかりな“改悪”がなされる可能性は充分にあるということ。すでにいま、“専業主婦いじめ”ともいわれる改定案が検討されている。
「厚生労働省の審議会の資料によると、国民年金の被保険者である1号、2号、3号とは別に『1.5号等』の提案も出ています。5年延長して65才まで国民年金保険料を納めた人は1号、それより少ない金額の厚生年金保険料を納めた人は『1.5号等』とし、差額の保険料を徴収するという考えです。その上で、専業主婦の第3号被保険者を減らそうという動きもあります」(北村さん)