現役時代、同じ時間、同じように懸命に働いても老後の暮らしには大差が生じる。その大きな要因は「年金」にほかならない。いったいどういうことなのか、具体例を紹介しながら、その対策を考えてみよう。【年金生活の天国と地獄・第1回。第2回につづく】
年金博士として知られる社会保険労務士の北村庄吾さんが語る。
「大まかに言うと、国が運営する公的年金は、20才から60才までの国民全員が加入する『国民年金』(基礎年金)と、サラリーマンや公務員などが加入する『厚生年金』の2階建てです。基礎年金は加入期間の長さ、厚生年金は現役時代の報酬で受け取る額が決まります。現役時代の働き方や、“いつから”受け取るかで金額は大きく変わるのです」
つまり一口に「年金」といっても、その内情には雲泥の差があり、それによって老後は「天国」にも「地獄」にもなり得るということ。
持ち家があり、定年後まで働いていても…
“天国での暮らし”はどのようなものか。
持ち家で夫と暮らすAさん(74才)は、夫が44万円で妻が22万円、合わせて月66万円の年金でゆとりのある老後を過ごす。
「ふたりとも定年まで必死で働き、娘3人を育てました。とにかくがむしゃらに走り続けてきたので定年後はゆっくり過ごそうと、夫は庭いじり、私は読書三昧の暮らしです。退職金などで預貯金が2000万円ほどあり、自宅のローンも完済。いまは悠々自適の毎日で、人生のご褒美だと感謝しています」(Aさん)
同じように持ち家があり、定年後まで働いてなお“地獄”を見るケースもある。