乗務員が大声で呼びかける様子は機内の緊迫を物語っていた。CA養成学校・OESアカデミー代表で元外資系CAの小澤朝子氏が指摘する。
「救難の際は笑顔を見せず、大声で叫ぶ、敬語を使ってはいけないなどのルールがあり、適切に守られていた印象です」
乗務員の呼びかけに呼応するように、周囲に「落ち着いて」と声をかける男性客の姿もあった。
「CAが現場の状況判断などに奔走しているなか、乗客が協力的で、落ち着いて声をかけ合っていたこともパニックコントロールに繋がりました。今後の教訓にすべきだと思いました」(小澤氏)
コックピットとの交信が途絶えた
フライトでは離陸の3分、着陸の8分は「クリティカル・イレブンミニッツ(魔の11分)」と呼ばれる。客室乗務員は専用の座席で、11分間は緊急事態の行動を思い浮かべながら過ごす。
今回の事故も、「魔の11分」の間に発生した。香山氏は、緊急時は機長からの脱出指示を待つのが通例だが、今回は異変が生じていたと指摘する。
「機内では、客席のCAとコックピットが連絡を取る『緊急連絡ボタン』が機能しませんでした。おそらく回線が切れてしまったと推測されます。
こうした場合、CAは5つある項目から異常事態への対応を判断するように訓練を受けています。今回は『航空機の火災』と『機内に煙が充満』の2項目が当てはまっていました。緊急脱出時の手順、判断基準を訓練通りに守ったことも重要なポイントでした」