過剰治療につながることも
そもそも必要性が薄いと考えられている検査も少なくない。
2012年にアメリカで始まった「チュージング・ワイズリー(“賢く選ぼう”の意。以下CW)」という運動では、各専門医学会が精緻な検証をしたうえで、“無駄”と考えられる医療行為を公開している。日本でいち早くCWの普及・啓発に取り組んできた室井氏が指摘する。
「例えば、高齢者に多い前立腺がんを調べる『PSA検査』は保険適用外で2000~5000円ほどかかりますが、前立腺がんは進行が遅く、検査が過剰治療につながる恐れがあるとされます。また、保険適用外で約2万円かかる大腸がんの内視鏡検査についても、1度受けて異常がなければその後10年は受けなくていいとされています」
検査のデメリットを把握することも重要だ。
「検査のなかには患部の一部をメスで切り取って生検するなど、侵襲的で医療事故を招きかねないものもあります。検査によっては、経済的にも身体的にも負担が大きくなるリスクがあることも知っておきましょう」(室井氏)
漠然とした不安に駆られて高額の検査を受ける前に、確かめるべきことは多くある。
※週刊ポスト2024年1月26日号