傘立ての傘が、どの客の物か気に留めなくても、注意を怠ったとはいえないように思います。その反面、それなら店内の傘立てを鍵付きのものにしなかったことは、過失といえなくもないでしょう。
両者に言い分があるため、あなたが交渉するのは無意味ではありませんが、裁判でもしない限り、決着はつかないかもしれません。
ただ、肝心なのは傘立てが店外にある場合、店に場屋営業者の責任を問うことはできないということ。なんにせよ、高級傘を店外の傘立てにさすのは、危険覚悟の上だと判断されるので、店内でも目の届く範囲に置くのが無難です。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年1月26日号