ダイハツ社長「経営の問題だと受け止めている」
失ったのは社会的信用だけでなく、メーカーとしての立場も大きく棄損しました。事の起こりは昨年(2023年)4 月のドアトリム不正、続いて5 月のポール側面衝突試験の不正が発覚したことでした。事の重大性から不正問題の全容解明と要因の分析、さらに再発防止策の実施に向けて、ダイハツとは利害関係のない外部の専門家(法律面ならび技術面)から構成される「第三者委員会」を設置。この時点で正常化に向けて進むかと思われました。しかし、より詳細に調べてみると、新たに25 の試験項目において、174 個の不正行為があったことが昨年12月20日に判明したのです。
この時、不正行為が確認された車種は、すでに生産を終了したものも含め、64 車種・3 エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)。この中にはダイハツブランドの車種に加え、トヨタ、マツダ、スバルへOEM供給をしている車種も含まれていました。そして不正は一番古いもので1989年、全体では2014年以降の期間に、類似の不正行為件数が増加する傾向にあったのです。
そして2024年1月16日、さらに14件の不正が見つかったというのですから、「型式指定」の取り消しはもはや避けることはできなかったのかもしれません。改めて同型車の型式指定を再取得しようとしても、その審査は通常以上に厳しくなり、時間もかかることになるでしょう。
まずは国土交通省がダイハツに対し、抜本的な改革を求めるとして、道路運送車両法に基づいて出された是正命令を真摯に受け止めてほしいと思います。斉藤鉄夫国土交通大臣は16日夕方、国土交通省を訪れたダイハツ工業の奥平総一郎社長に対して「会社の体制や体質を抜本的に改革しなければ、失墜した信頼を取り戻すことができないことを肝に銘じ、二度とこのような不正を行うことがないよう再発防止に真剣に取り組んでください」と述べて、是正命令書を手渡しています。そして今後、1ヶ月以内に再発防止策を報告するよう求めています。
これに対し、ダイハツの奥平社長は「是正命令については、大変重く受け止め、組織のあり方などについて検討し、1ヶ月以内に報告、公表する」と回答。不正の原因については、「経営の問題だと受け止めている。身の丈をこえる仕事を詰め込みすぎたことや硬直的なスケジュールを変えられなかったこと、また、そうせざるをえなかった現場の環境などを含め、経営がつくってきたものだ」と猛省の姿勢を示しています。
さらに親会社のトヨタ自動車の佐藤恒治社長も、このダイハツが是正命令を受けたことを受け、「大変重く受け止めている。信頼していただいているお客さまにご迷惑をおかけしていることを改めて深くおわび申し上げます」と述べ、陳謝。さらに今後、ダイハツは軽自動車に注力する可能性もあるといった内容のコメントを残しています。
一方で19日には、今回の不正問題で出荷停止になっていたダイハツ「グランマックス(バンタイプ」など5車種について「安全性などの基準を満たすことが確認できた」として、ダイハツへの出荷停止指示を解除。これで5車種は生産が可能になるわけです。
もはやダイハツに、二度目は許されません。ここで大鉈を振るい、膿を出し切ることを願うのみです。そしてもう一点、日本の製造業の信頼性がこれ以上揺らがないためにも、今回の不正問題のようなことが、他のメーカー、他業種にはないことを祈ります。