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【ダイハツ不正問題】3車種「型式指定」の取り消しが示す大きな意味 「今月には生産再開」の観測から一転

認証試験不正問題で斉藤鉄夫国土交通相に謝罪するダイハツ工業の奥平総一郎社長(1月16日。時事通信フォト)

認証試験不正問題で斉藤鉄夫国土交通相に謝罪するダイハツ工業の奥平総一郎社長(1月16日。時事通信フォト)

 2023年末、日本のモノづくりの根幹を揺るがす結果となったダイハツ工業(以下、ダイハツ)の認証申請に関する不正問題。年が明けた1月16日、国土交通省は大量生産に必要となる「型式指定」の認証申請で不正をしていた問題で、もっとも悪質な3つの車種、ダイハツ・グランマックスと、ダイハツがOEM製産して供給していたトヨタ・タウンエース、マツダ・ボンゴの型式指定を取り消す方針を固めた。自動車ライターの佐藤篤司氏が、今回の異例の措置について解説する。

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「まさか、そこまでやるのか!」──それほどの衝撃を受けたのが、今回の国土交通省による「型式指定」の取り消しです。

 国土交通省は取り消しの発表の前日(1月15日)に、滋賀県竜王町にあるダイハツの工場で行われた「安全性の基準に適合しているかを確認する衝突試験」を公開していました。こうした各種の試験は1月9日から行われていて、現在販売されている27車種の、すべてに対して進められていたのです。

 15日の試験では、運転席と助手席にセンサーが付いた人形を乗せ、実際に試験車両を壁に衝突させ、正しくエアバッグが作動して、乗員に対してどのような負傷を与えるかなど、本来の形でデータ収集を行いました。さらに燃料漏れの有無など、安全性能が基準を満たしているかを確認しました。

「性善説」という前提が揺るがされる事態に

 公開された衝突試験について、ダイハツの品質管理を担当すると言われる星加宏昌副社長は「立ち会い試験を行い、顧客に安心してもらえるように全項目をしっかり確認していくことになる。国土交通省と調整して、できる限り早く確認してもらえるようにしたい」という内容の発言をしています。不正発覚以来、多くのダイハツ車ユーザーが抱いている最大の懸念事項にひとつの“回答”を示せるのでは、という思いがあったのでしょう。さらに言えば、その先には、わずかながらでも製造再開への第一歩が示せるのではないか、という期待があったのかもしれません。

 それに対し、国土交通省は、すべての車種の基準適合が確認できるまでには数ヶ月以上かかるとし、今後は試験を終えた車種ごとに結果を公表して、出荷停止の指示を解除するかどうかを判断するとした。一部には基準適合ならば、今月中にも生産再開を認める可能性も、という観測もあったのです。

 それが一転、とくに悪質な不正としてダイハツ・グランマックスと、ダイハツが製造して提供していたトヨタ・タウンエース、マツダ・ボンゴの3車種の「型式指定」を取り消すと、明らかにしたのです。命に直結する装置であるエアバッグの認証試験での不正ですから、特に悪質と判断されたのでしょう。とにかく車開発に関わるすべての人たちは、この大量生産に必須の「型式指定」を取得するために日夜積み重ねてきた努力が水泡に帰すわけです。

 そしてあらかじめ国の認証テストが正しく行われ、同一型式の製品のすべてが所定の基準に適合していて問題なし、ということになって初めて、国土交通省も型式指定を出すわけです。当然ですが、これにより個々の製品に対する審査が簡略化され、大量生産が効率的に行えることになります。

 ユーザーは製造されてくる車の品質を信じて購入するわけです。表現が正しいかどうか分かりませんが、すべての流れが“性善説”に支えられて成立しているようなものです。ところが、そのどこかに「不正」があれば、この流れは阻害され、維持できなくなります。極端かもしれませんが、型式指定が取り消されれば、製造したすべての車を一台一台検査しなければならなくなり、当然ながら大量生産など不可能になるわけです。

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