外国人ばかり丁寧に接客するようになって…
都心で居酒屋を営む40代男性・Bさんの店でも、現在チップの扱いはAさんの店と同様だ。
「土地柄、外国人のお客様は増えていて、バイトの学生にチップを渡そうとする方もいます。最初はありがたくいただいていたのですが、今は原則いただきません。もし断りきれなかったら、私に報告するように指導しています。チップは貯金箱で管理し、集まった合計額は全額寄付しています」
「申告制」にしたきっかけは、ある男子学生バイトの変化からだった。
「最初は彼のモチベーションにもなるだろうと思っていたのですが、外国人ばかり丁寧に接客するようになり、他の日本人のお客様からクレームが入ってしまいました。注意すると反省するかと思いきや、チップで自分に自信を持ってしまったのか、『時給を上げてほしい』と言い出す始末……」
こうした経験からチップについて、Bさんは「手放しで喜べない」という認識に変わった。「ある程度の金額になると税金の申告の問題も出てくるし、そもそもチップ文化がある国と日本とでは、サービスに対する考え方が違う」という。
「平均以上のサービスについてチップで評価するのが海外だとしたら、チップをあげなければサービスの質が落ちる可能性があるから、チップをあげるわけですよね? 日本の飲食店においては、よいサービスを均等に提供しているのが売りなんだと思うんです。チップをもらってももらわなくても、来てくださったお客様には等しく接するように口酸っぱく伝えています」(Bさん)
外国人観光客の増加に伴い、日本に馴染みのないチップ文化に接する機会も増えてきた。そうした中で戸惑いや困惑を隠せない店も増えつつあるようだ。(了)