今年4月にスタートするのが「相続登記の義務化」だ。これまで、土地や建物の所有者が亡くなった場合、不動産登記の名義変更は義務ではなかった。故人宛てに送られてくる固定資産税納付書を使って誰かが納税していれば、特に咎められることもなかったが、結果として所有者不明の土地が増えるなどの問題が生じたため制度改正された。
4月以降は不動産を相続して3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科されることになる。
ただ、「相続登記」は楽な手続きではない。亡くなった人や相続人の戸籍関係の書類を取得し、遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議書を作成して不動産の所有者を確定、その後に登記申請書を作成して他の必要書類とともに法務局に提出する……といった手順を踏む必要がある。
相続登記が義務化されるから不動産は親が“生前整理”を
そうした面倒な手続きが嫌だという人は、別の発想をしてもいいだろう。「相続登記をしなくて済むように備える」という考え方だ。司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏は「親の存命中に不動産を売却してもらうことが有力な選択肢になってくる」と話す。
「実家などの不動産を相続したものの、遠隔地のため相続人である子が管理できず、問題に直面しているケースは少なくありません。荒廃した建物や敷地の雑草について近隣住民から苦情が出たり、空き家のままにしておくことで行政から『特定空き家』に認定されて固定資産税が増加するリスクがあります。
手間暇かけて相続登記の手続きをしたうえに、その不動産に様々な問題が生じるのは馬鹿らしい。親の存命中に“生前整理”の相談ができれば、親と付き合いのある近隣の知人や親類に引き取ってもらうなど、比較的スムーズに処分を進めやすい。子との2世帯同居やケア施設への転居の前後に、ご自宅の不動産整理を検討される方は多いです」