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キャリア

「桜蔭に入れたいならSAPIX一択」と娘を入塾させた中学教師ママ テキスト、地理的条件、大手塾ならではの強みを実感

自分の立ち位置が正確にわかる

 そのメリットはなにか。

「大手塾にいると、自分がどの位置にいるかを把握できることが大きいです。中小塾だとテストの母集団が少ないから立ち位置が分かりにくい。だから、他塾の生徒も学力上位層は6年生になるとSAPIXの模試を受けます」

 SAPIXは一学年6000人の生徒がいるといわれる。しかも、学力上位層が多いのが特徴だ。

 同じ中学受験の模試でも、四谷大塚や日能研の模試で偏差値60の学校が、SAPIX模試だと50になる。母集団が学力上位層なので、高偏差値帯の学校の偏差値の精度が高い。ゆえにSAPIX模試を受ければ、高偏差値帯で自分がどこにいるのかが正確に把握しやすい。中小の難関校向けの塾の生徒が6年生の夏ぐらいからSAPIX模試を受けて、自分の偏差値の低さに愕然とすることは多々あるのだ。

 実際、ある中堅の難関校向けの塾に通う6年生の保護者はこう話す。

「模試は週末にありますが、6年生の週末ってめちゃくちゃ忙しいですからね。普段、通っている塾の講習やテストがある中で、SAPIXの模試を受けるのは時間的にかなり大変です。通っている塾のテストを受けないでSAPIX模試だけにしたいんですが、そうもいかないので……」

 SAPIXは大手塾なので入試傾向や入試結果データを持っており、それを提供してくれるのも魅力だという。

 他の難関校対策の塾にも長所や個性がある。敏腕講師たちが手厚く指導をするZ会エクタス、算数に強みがあるエルカミノ、完全予習主義のアントレ。ただ、それらの塾は中小規模なので、校舎の数が多くない。家の近くにない場合は検討が難しいということもあろう。

 今回はなぜ「難関校を狙うならSAPIXか」ということについて言及した。A子さんはテキストを読み込み、情報収集をし、総合的に判断して、娘をSAPIXに入れた。しかし5年生の冬、転塾をさせることになってしまった。

 次回、話の続きを書いていこう。

第2回につづく

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)では小説『ボリュゾっていうな!~ギャルママが挑む“知識ゼロ”からの中学受験ノベル~』を連載。

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