「日本のノーベル賞は1980年代の業績によるもの」
バブル崩壊により「バブルの反省・忌避」の気運が高まったが、現在ではそれが行き過ぎ、“負の側面”が生じているというのは、元日銀審議委員で名古屋商科大学ビジネススクール教授・原田泰氏だ。
「バブル期までは企業も利益があがり新規事業や設備投資、研究開発投資を進めていましたが、バブル崩壊後は多くの企業がそうした取り組みを躊躇うようになった。これにより、科学技術の発展に影が落ちたのです」
例えば、リチウムイオン電池の発明でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏や、医療用イベルメクチンの開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏らの研究は、いずれもバブル期の1980~1990年代頃に研究開発投資を受け、成果を挙げていた。
「それらは将来儲かるかどうかはわからないまま、投資が続いたからこその成果と言えます。2015年にニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授は、『日本のノーベル賞は1980年代の業績によるもの』と発言していました。バブル崩壊後、打ち切られた研究が多数あったことを考えると、この30年間に日本が失ったものは大きいと言わざるを得ない」(同前)
※週刊ポスト2024年2月23日号