新NISAで口座を開設する人が増えているが、転勤などで海外赴任を控えている人は注意が必要だ。そもそも、課税口座の証券口座にも大きな制限が加えられることになる。NISAの注意点や海外転勤者の資産運用の手段について、ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんが解説する。
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多くの方のご相談に応じてきた経験上、高年収で資産運用に積極的な方には、グローバル志向の方が多い傾向にあると感じています。そんなある日、セミナー後にお客様とお話ししていた際、こんな相談を受けました。
「ずっと海外転勤希望を出していたのが通って、やっと赴任が決まって嬉しい。今年中には行けそうなので、急いで新NISAを始めないとまずいですよね?」
どうやら海外では手続きが大変だから、日本にいるうちにしないとまずいと思ったそう。本記事では、海外赴任など海外に転居される方の資産運用について解説していきます。
NISAは国内居住者でないと原則利用できない
原則、NISA制度は国内居住者でないと利用できません。所得税法で「国内居住者」とは、〈国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人〉をいい、「居住者」以外の個人は「非居住者」と規定されています。そのため、海外赴任をして住民票を海外に移すなど国内居住者でなくなると、原則NISA制度は利用できなくなり、NISA口座で保有している商品は課税口座に払い出されてしまいます。
意外とこのことは知られていないようで、冒頭のお客様のように「知らなかった」と言われたことが何度かあります。
転勤者であれば最長5年まで保有継続できる
とはいえ、それでは海外転勤があり得る会社員はNISAを利用しづらいと、国は2019年から税制改正しました。一定要件を満たした人は、海外赴任中もNISA口座を最長5年まで非課税で保有を継続でき、帰国後に手続きすればまた運用を継続できるようになっています。
具体的には、
・給与等の支払をするものからの転任の命令等の理由により出国をして非居住者となった
・出国する日の前日までに「(非課税口座)継続適用届出書」を提出している
を満たす人なので、いわゆる「転勤者」しか対象になりません。自営業の人の海外事業展開や、自発的な留学などで海外在住となる場合は難しいでしょう。また、海外にいる時に続けられるのはあくまで「保有」のみ。新しく買付することはできません。