人生100年時代となった今、老後のための資産形成が重要だ。今年から新NISA(少額投資非課税制度)がスタートして話題になっているが、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の活用も考えておきたい。新NISAとの第一の違いは、より節税効果が高いこと。運用益が非課税になるだけでなく、受取時に公的年金等控除または退職所得控除の対象になり、さらに積立時の掛け金も全額所得控除の対象になる。
いつでも引き出せる新NISAとは異なり、60才になるまで引き出せず、65才以降は新規の積み立てはできなくなることも異なるポイントだが、運用自体は75才まで続けることが可能だ。家計再生コンサルタントの横山光昭さんが言う。
「60才を超えた後も働くなら、60才からでも5年間は新たに積み立てることができるので、節税しながら資産運用をするのはメリットだと言えます。仮に毎月5万円を投資に回せるなら、iDeCoに2万3000円(会社員の上限)、残りの2万7000円を新NISAに回すようにすると、iDeCoの節税メリットを最大限生かしながら運用することができます」
すでに60才を超えていても、諦めるのは早い。勤労収入が減ったことで、毎月積立投資をする「資産形成」は諦めることになるかもしれないが、非課税保有期間が無期限になった新NISAを使えば、それまで続けてきた「運用」は、そのまま継続することができる。老後の資産問題に詳しいフィンウェル研究所代表の野尻哲史さんが言う。
「定年退職して資産形成をやめてからも、資産運用は続けることをおすすめします。新NISAとiDeCoを併用し、80才頃までは運用する想定で続けてほしい」(野尻さん・以下同)
資産形成でつくり上げてきた資産の寿命を延ばすためには、「取り崩し方」も重要。野尻さんが定年後にすすめるのは「運用を続けながら、残高に対して一定の“率”で取り崩し額を計算する」こと。
「例えば、80才以降は年金以外に毎月10万円が必要になるとすると、100才までの20年間で2400万円を資産から工面しなければなりません。そこで、例えば65才のときから『年利3%』を目指して運用する。同時に毎年4%ずつ取り崩すようにすると、資産の減少は年1%ずつに抑えられます。
つまり、65才時点で約2800万円を用意できていれば、運用をストップする80才の時点でも、必要額である2400万円を残すことができている計算になるのです」
資産寿命を延ばすには、時間をかけて少しずつ増やしながら、大きく減らないための計画が必要なのだ。