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ネット社会を予見していた「リクルートと江副浩正」の時代 逮捕によって日本経済の構造転換は30年遅れた

「通信自由化でやがて『もしもし』の電話事業は儲からなくなる。NTTが生き残るなら『データ』しかない」

 そうして作られたのがシステムインテグレーターのNTTデータである。

 同じ未来を見据える3人は1985年、「マップデータ」という会社を設立した。地図情報をデータベース化し提供する会社だ。そのネット版「グーグルマップ」の開始が2005年であることを考えれば、3人の発想は20年早かった。

 当時の日本でネット社会の到来を予感していた3人がリクルート事件で表舞台を去り、日本経済の構造転換は30年遅れた。

 江副の有罪で、「起業=いかがわしい」という社会通念が蔓延。かくして日本はベンチャー不毛の国となる。その逆風をかき分けて成長したのがソフトバンクグループ社長の孫正義や楽天グループの三木谷浩史である。

 しかし、既得権益と闘ってきた彼らには敵が多く、いつ社会的地位を脅かされるか分からない。彼らを“殺せば”今度こそ、日本の起業家精神は死に絶えるだろう。

【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年、日本経済新聞入社。日本経済新聞編集委員などを経て2016年に独立。『起業の天才! 江副浩正8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)が第43回「講談社本田靖春ノンフィクション賞」最終候補にノミネート。近著に『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)。

※週刊ポスト2024年2月23日号

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