竹内氏によれば、自宅用に比べて賃貸用の物件だと土地の評価額は2~3割下がり、建物も3割程度下げられる。「都市部の物件であれば売却すると1億円程度の価値があるアパートが、相続税評価額では3000万~4000万円程度に圧縮されることは珍しくない」(竹内氏)という。
1億円の現金を相続すれば相続税は1220万円だが、1億円で売れるアパート(評価額3000万円)なら相続税はゼロになる(相続人が子1人で、他に遺産がない場合)。節税効果は非常に大きい。貸付事業用の小規模宅地等の特例の適用を受ければ、敷地(200平方メートル以内)の評価額が5割減になり、より大きな節税になる可能性もある。
ただし、節税効果の大きさばかりを追い求めると、落とし穴にはまることもある。
空室だらけで赤字に
前出の司法書士の野谷氏は、「相続税の節税メリットを重視するあまり、賃貸用不動産としての運用に問題がある事例が散見される」と指摘する。
「私が相談を受けた上場企業勤務の方は、10年ほど前にマンション業者の勧誘により新築ワンルームマンションの数室を購入していました。マンション業者の提携の金融機関でローンを組み、その借入金により相続税算定時の資産が圧縮されて節税になるとの話だったといい、それに加えて30年間にわたりマンション業者が一括借り上げ(サブリース)をするため安定した家賃収入が見込める予定でした。
しかし、契約から10年後にマンション業者から一括借り上げの家賃減額を通告され、減額後の家賃収入がローンの支払額より少なくなってしまった。築年数が経過したことで賃料収入が思ったように伸びないという失敗例です」