児童虐待を防ごうとご近所さんが児童相談所などに通報するケースも少なくない。例えば「おつかい」も児童虐待にあたる可能性があるのだろうか。児童虐待について実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
私には6歳になる息子がおります。たまに息子には社会勉強だと思い、近くのスーパーに買い物に行かせています。しかし、ご近所さんから、ひとりで買い物に行かせるのは「児童虐待ではないか」と注意を受けました。息子を家から100mも離れていないスーパーに行かせるのは、虐待になるのでしょうか。
【回答】
『児童虐待防止法』の定義によれば、児童虐待とは親権者など、その保護者が行なう行為で、
【1】児童の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること
【2】児童にわいせつな行為をすること、又は児童をしてわいせつな行為をさせること
【3】児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、又は長時間の放置等
【4】児童に対する著しい暴言、又は著しく拒絶的な対応など、児童に深い心理的外傷を与える活動
とされています。
6歳の男の子を近所のスーパーに買い物に行かせることは【1】、【2】、【3】に該当しないのは明らか。
そして、【4】が指摘する「心理的外傷」とは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)ですが、強いショックや精神的ストレスを受けて食欲不振、悪夢、夜尿等、様々なストレス反応を起こすこと。この場合、著しい心理的外傷を与えることが必要ですから、その原因は【4】に例示されているように、激しい暴言を児童に浴びせたり、極端な拒絶対応を示すことによるのと同程度の心理的外傷が生じる活動であることを要します。