大きな社会問題となっている児童虐待は、決して他人事ではない。もしも、周囲で虐待が疑われる事象を知った時、児童相談所と警察のどちらに通報すべきか、判断に迷うケースもあるだろう。また、虐待の確証がないケースでも通報して良いものなのか、という問題もある。虐待疑惑への対処について、弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
児童虐待が問題となっています。以前に竹下弁護士は、虐待の疑いがある場合、躊躇せずに通報してくださいと誌面を通じ、呼びかけておられました。しかし、昨今のニュースで自治体の無責任な対応を見てしまうと、ちまたの児童相談所などではなく、警察に直接、通報するほうがよいと思うのですが。
【回答】
児童相談所は児童と、その家庭について調査を実施し、医学、心理学、教育学的な判定をして、児童の健康や心身の発達に関する指導を行なうことを業務とします。子供の問題を扱うに相応しい役所です。
親権者は「監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる」(民法)ので、不服従の子を処罰できます。度を越した躾は、子供の心身の健全な発達を阻害し、犯罪にもなりますが、難しい判断が必要となり、警察マターになるかは微妙です。
『児童福祉法』は、虐待を受けたと思われる児童を発見した者に、児童相談所等への通告義務を課しています。虐待の確証がなくても、そう思える場合に通告すれば、国民の義務を果たしたことになります。実際には許容される懲戒だったとしても、通告の責任を問われることはありません。