IMF(国際通貨基金)は1月30日、2024年における世界の経済成長率見通しについて3か月前の予想を0.2ポイント引き上げ3.1%とした(2023年推計は3.1%、2025年予想は3.2%)。上方修正の要因は、米国の見通しが0.6ポイント引き上げられて2.1%、中国が0.4ポイント引き上げられて4.6%となるなど、大国の見通し改善によるところが大きい。もしこの見通しが崩れるとしたら、米中経済の変調ということになるが、現在、投資家が懸念しているのはどちらかというと、中国の方であろう。
IMFは見通し引き上げの理由として、中国が財政支援を強化することで不動産不況ともいえる現状を回復させるだろうといったことを挙げているが、この予測の当たり外れが気になるところだ。
中国住建部(建設事業などの国家行政を司る省)は1月26日、都市不動産融資協調メカニズムを全面的に計画し実行に移すための会議を開催した。
昨年12月に行われた中央経済工作会議において不動産業に対する行政方針の大枠が示されたが、それに照らし合わせ、現在開発が滞っている案件を中心に「地方政府が個別の開発プロジェクトごとに“融資による国家支持に値するかどうか”を判断し、ふさわしいのであればそのプロジェクトを“ホワイトリスト”に登録、行政区域内の金融機関と協調し、融資を実行する」といった政策の即時実施を決定した。
中国基金報(2月8日付)によれば、記者が住建部、金融監督管理総局などから得た情報として、「1月末時点で26省170都市において不動産融資協調メカニズムが始動、第一弾の“ホワイトリスト”が商業銀行に送られたが、その数は3218プロジェクトに達している。このリストを受け取った銀行側の情報によれば、すでに27都市、83のプロジェクト、総額178億6000万元(3697億円相当、1元は20.7円)の融資について、規定に基づいて審査を行った」という。
国有企業ばかりが選ばれるというわけではなく、民営企業や混合所有制企業によるプロジェクトが全体の84%を占めており、中には、碧桂園、融創中国、佳兆業、遠洋集団といった経営リスクが高いとみなされている企業の案件も含まれるようだ。今回の融資の資金使途はあくまで、紐づけられた案件の開発に限られる。その点で個別企業の財務体質の強化には役立たないが、プロジェクトの進展は収益の確保につながる。
第一弾の規模について、仮に1プロジェクトあたりの建設面積を15万平方メートルとすれば、全体で4億8000万平方メートルとなり、これは2023年末における建設中案件の総面積の5.7%程度となる。春節前の段階で、すでに第二弾の選定作業を始めている地方もある。この政策が順調に実施されれば、大規模な支援策となるだろう。