子どもを持つことは、高級車やブランドバッグと同じ“贅沢”
「今の若い層にとって、子どもを持つことは、高級車やブランドバッグと同じで、もはや手の届かない“贅沢”なものになっています。世帯年収900万円以上では、子のいる世帯数は昔とほとんど変わっていませんが、900万円未満のボリュームゾーンでは激減している。
大都市のタワマンに住めるような裕福なパワーカップルは子ども3人を育てている一方で、20代の若者の可処分所得の中央値が300万円にも満たないという現実があり、結婚や出産どころか日々の生活で精一杯なのに、そこからさらに子育て支援金など負担が増えるような政策はいかがなものかと思います。『若い世代の所得を増やす』という基本理念は一体どこにいったのか、と」
岸田政権がやろうとしている“少子化対策”は、極端な言い方をすれば、結婚できない貧乏な若者からお金を徴収し、すでに複数の子どもがいてタワマンに住んでいるパワーカップルを支援するという、格差を拡大しかねない政策なのである。
しかし、少子化対策の基本理念の第一に「若い世代の所得を増やす」とあるということは、政府与党も官僚も、問題の本質を理解しているということだ。それなのになぜこうした不可解な政策が通ってしまうのか。
「政府の本音を類推すれば、少子化対策と言いさえすれば、国民からいくらでも搾り取れる、増税できると思っているんじゃないでしょうか。少子化対策に効果があるかどうかは、もはやどうでもいいのでしょう」
少子化がさらに進めば、徴収額を増額する口実になるので、そのほうが都合がいいのかもしれない。
取材・文/清水典之(フリーライター)