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【少子化加速・格差拡大】岸田首相「少子化対策に月500円徴収」の本末転倒 貧乏で結婚できない若者から徴収したお金をパワーカップルに配るのか

「歳出改革を継続すれば、差し引きで国民の負担は生じない」と強調した(時事通信フォト)

「歳出改革を継続すれば、差し引きで国民の負担は生じない」と強調した(時事通信フォト)

 岸田文雄首相は、よほど“増税メガネ”と呼ばれたくないのだろう。2月6日の衆院予算委員会で、少子化対策の財源3.6兆円のうち、「子ども・子育て支援金」として1兆円程度を公的医療保険の保険料に上乗せして徴収する方針を示した。初年度の2026年度に約6000億円を徴収し、段階的に増額して28年度には約1兆円規模にするという。岸田首相は「粗い試算で、拠出額は加入者1人あたり月平均500円弱になる」と答弁した。新たに必要となる予算の財源として、税金ではなく、社会保険料を財源に選んだわけだ。

 この「1人あたり月500円」という表現には、多方面から批判の声が上がった。国民民主党の玉木雄一郎代表は、Xでこう述べている。

〈少なくとも保険料を直接負担する被保険者1人当たりの負担額を説明すべきで、協会けんぽで月1,025円、組合健保で月1,472円という試算もあります。年額で言うと2万円近い負担になる人も出てきます〉(2月6日午前11:59に投稿)

 実際の負担額は、加入する医療保険や所得によって変わり、高齢者世帯と現役世帯でも大きく異なる。

 NHKの報道(2月8日付)によれば、〈政府は世代間の負担割合について検討を進めた結果、当初の2年間は、現役世代を含む74歳以下の医療保険の加入者に対し、事業主の負担分も含め、全体の92%の負担を求める方向で調整を進めています〉と、財源のほとんどを現役世代が負担することになるという。

 つまり、現役世代から支援金を徴収し、これから子どもを作る予定のある夫婦や、子育て中の夫婦を支援することで少子化を止めようとする政策だが、少子化問題に詳しい独身研究家の荒川和久氏は、まったく意味がないと断じる。

「まず、子育て支援をすれば出生率が上がるという因果関係は確認されていません。2007年に少子化担当大臣が設置され、民主党政権で子ども手当が拡充され、家族関係政府支出は1995年比で2倍にも増額したのに、出生数は4割減です。子育て支援を充実させても出生数は増えるどころか減る一方です。

 子育て支援は、少子化だろうとなかろうとやるべきことですが、それと少子化対策とは全く次元の違うものです。子育て支援をすれば、子どものいる夫婦がもう1人子どもを産むかというと、そうはならずに、すでにいる子の教育費に回すだけになりがちです。少子化対策とは、子ども0人→1人という新たな出生増につながるものでないと意味はありません」(荒川氏、以下同)

 少子化対策として集めた支援金を投入する“先”が間違っているというのだ。

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