私が学長を務めているBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学も「カフェテリア方式」だ。つまり、大学は皿だけ渡し、学生は用意された料理(授業)の中から自分が食べたいもの(身につけたいスキル)を選ぶのである。好きな料理だけ食べ続けても(1つのスキルを深く学び続けても)よいし、いろいろな料理を食べても(複数のスキルを学んでも)よい。学生はラーニングアドバイザーと相談しながら、自分がやりたい分野で稼ぐ力をつけていくという仕組みである。
世界の高等教育はそこまで進んでいるのだ。そういう時代に4年制の固定したお仕着せカリキュラムの日本の大学に通っていても、絶対に稼ぐ力はつかない。
大学が的外れな教育をしているせいで、日本の国際競争力は2023年のIMDランキングで35位となり、過去最低を更新した。その中身を吟味せず、血税を使って無償化するのは愚の骨頂だ。大学は稼ぐ力をつけることだけを目的にすべきであり、日本はそのための本質的な高等教育改革を断行しなければならない。
教育は「国家百年の計」である。すでに大半の日本の若者の能力は世界標準から大きく後れをとっている。いますぐ高等教育改革に着手しなければ、これから大学に進学する若者はますます海外の人材に太刀打ちできなくなってしまうだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
※週刊ポスト2024年3月1日号