ところで、あなたの預かりは子の財産を管理する親権者の権限の行使です。他人の財産を管理する場合、一般人として要求される注意義務(善管注意義務)を尽くすことが原則ですが、親権者が子の財産を管理する際には、義務の程度が自分の財産に対するのと同程度の注意義務まで緩和されます。
ただし、子と利益が相反する時には、家庭裁判所に特別代理人の選任を求める必要があります。お年玉を親個人のために使ったとすると親権者の義務に違反しており、成人している娘さんは、お年玉の返還を請求できます。
よって、義務に反して使っていれば、返す義務も生じます。令和2年4月以後の債務は5年で時効となりますが、それ以前のお年玉で、5年前に成人された娘さんには適用されません。
まずは、お年玉を娘さんのために使ったことを丁寧に説明し、納得してもらうことが重要です。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2024年3月1日号