子供がもらったお年玉を、親が預かっておくというケースもあるだろう。では、後に子供から「あのお金を返して」と言われた場合、返金義務はあるのか? 返金しなかった場合、罪に問われるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
25歳の娘が「小学生の時に“俺が預かっておく”といわれ、渡していたお年玉を返して」と要求してきました。そういえば、彼女が小学校を卒業するまでの6年間で、約18万円を預かっていました。そのお金は、彼女のために使ったとは思うのですが……。この場合、娘に返金しなければ、罪になりますか。
【回答】
罪に問われることはありませんが、清算を求められたら、使い道によっては問題になります。
お年玉の授受は、契約の一種である贈与です。契約は親権者の同意がないと未成年者はできませんが、贈与を貰うように権利を得るだけの場合は、未成年者でも利害得失を判断できれば、単独で可能です。お年玉を覚えているくらいですから、娘さん自身の判断で、ありがたく頂戴したのでしょう。
娘さんへの贈与は有効であり、お年玉は娘さんの財産です。それを預かった親が、仮に自分の遊興などに使った場合、もともと娘さんのために使うことができれば背任、単に保管するだけだと横領になり、刑法で処罰される犯罪です。
しかし、刑法には親族相盗例といって、親子など一定の親族の間の財産犯罪に介入しない原則があって、背任にせよ横領にせよ、処罰されることはありません。