航空整備士も「50歳以上が約4割」
人手不足はパイロットだけではない。航空整備士も高年齢化が進んでおり、深刻な人手不足が懸念されている。
国交省によれば、主要航空会社と整備会社を合わせた整備士の年齢構成は50歳以上が約4割を占め、整備士資格を持つ約8500人のうち約2000人が今後10年ほどで退職する見込みだという。
整備は運航の安全を支える重要な業務であり、航空機の着陸から離陸までの間に行う「ライン整備」と、航空機を格納庫に入れて客室内の座席仕様の変更やエンジン交換など詳細な点検などを行う「ドック整備」に大別される。これらの業務を担うにはそれぞれの作業に応じたライセンスを取得して航空各社の社内教育訓練を十分に受ける必要がある。パイロットと同じく一朝一夕には養成できない。
同じ整備士でも資格によって不足状況にバラつきがある。ライン整備を想定した一等航空運航整備士(1459人)は、ドック整備を含めたすべてを行うことができる一等航空整備士(4991人)と比較するとかなり少ない。ライン整備に携わる人材のやり繰りがつかなくなれば、航空機の出発着時間の遅れにつながる。すでに一部の空港では、整備士不足が原因で増便や新規就航への対応が即座にできなかったという事例が起きている。
資格の種類にかかわらず「航空整備士離れ」も進んでいる。全国9校の航空専門学校等(指定養成施設)は整備人材全体の6割強を供給しているが、コロナ禍前から入学者の減少が見られ、就職しても離職する人が増加している。
人手不足の背景にある待遇問題
人手不足は、空港業務に携わる職種にも及んでいる。
例えば、グランドハンドリング(グラハン)と呼ばれる職種だ。航空機の駐機場への誘導、燃料給油といった「ランプ業務」と、手荷物の預かりや仕分けなど「旅客ターミナル業務」、航空機に搬送し貨物室への荷物の積み下ろしを行う「貨物ターミナル業務」と多様だが、国交省のグラハン主要61社に対する聞き取り調査によれば、ランプハンドリング従業員は2019年3月末の約1万2200人から、2023年4月時点には1割ほど少ない約1万1000人となった。旅客ハンドリング従業員も1万4100人から1万1500人へと2割ほど減った。