減便→収益悪化→地方疲弊という悪循環
このままパイロットが大量退職を始める2030年を迎えたならば、撤退せざるを得ない路線が出てくるだろう。鉄道や路線バスにおいては赤字区間だけでなく大都市においても減便や廃止の動きが広がっているが、航空会社も事情は変わらない。営利企業である以上、収益を考えなければならないからだ。
経営の合理性から判断すれば、国内線、国際線とも大きな利益を期待できる路線を優先し、利用者の少ない便から縮小が始まることだろう。そうでなくとも地方空港は今後、減便や廃止の対象になりやすい。グラハン事業者には地元企業が少なくなく、若い世代が少ない地方都市ほど従業員確保が難しくなるためだ。
離発着する便数が減れば、県庁所在地などと結ぶバスやタクシーの乗客数も減り、空港施設内の売店も売り上げが落ち込む。こうした事業を営む会社にとっても打撃だ。結果として空港から県庁所在地などへのアクセスが悪くなれば、利用者にとって使い勝手の悪い空港ということになり、さらに便数が減るという悪循環に陥っていく。
それは地方創生に多大な影響を及ぼす。航空便が減ったり、廃止となったりすれば大都市圏との交流は細る。それによって観光や地場産業が打撃を受け地域経済が疲弊すれば、若い世代を中心に流出が加速し人口減少に拍車がかかる。
今後求められる「最適解」とは
もちろん、人手不足の影響は地方空港や利用客が少ない航空路線の減便や廃止だけで終わらない。出生数の減少でパイロットなど各職種の対象年齢人口が減っていくためだ。今後、なり手は減り続ける。
航空人材の不足が出生数減という構造的な問題に根差している以上、いずれ大胆な見直しが避けられなくなる。人口が減り続けることによる日本人の航空需要の縮小も避けられず、将来的には、収益性の高い航空路線まで運航便数を減らさざるを得なくなっていくことだろう。