「郵政民営化が実現すれば、価格競争が起きて料金が下がりサービスは向上する」──かつてそんな期待が語られた時代もあった。しかし、ユニバーサルサービス(全国均一で安定的に利用できるサービス)を提供するよう義務付けられた日本郵便は、インターネットやSNSの普及で手紙の需要が激減する中で、深刻な人手不足も重なり、ますます苦境に立たされている。活路はどこにあるのか? 人口減少時代の社会経済問題に詳しい作家・ジャーナリストの河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編から読む】
* * *
公益性が高い郵便事業は、ユニバーサルサービスが法律で義務付けられている。採算性を見込めない過疎地であっても均一のサービスを提供しなければないということだ。商店がすべて撤退・廃業した二次離島(本土との間を直接結ぶ公共交通手段がない島のこと)でも郵便局だけは残っているケースが見られるのもこのためである。
こうしたユニバーサルサービスの維持コストの拡大が、将来的に経営上の大きな重荷になってくることは総務省も日本郵便も分かっているはずだ。だが、これを見直して郵便サービスが届かなくなる地域を生じさせれば、そこの衰退は避けられず、地域住民の猛反発が予想される。ユニバーサルサービスの見直しの検討というのはパンドラの箱を開けるようなものなのである。現段階で政治問題化させることは避けたいというのが本音なのだろう。
しかしながら、人口が激減する日本においてはユニバーサルサービスの維持は極めて困難である。人口というのは全国一律に減るわけではなく、減少が激しくなるほど地域偏在は拡大する。すなわち、郵便事業が採算割れする過疎エリアは拡大の一途をたどるということだ。
人口減少がユニバーサルサービスの維持にもたらす悪影響はそれだけではない。少子化による人手不足で最低限必要な郵便局員数の確保を困難にする。働き方改革に伴ってドライバーが不足する「物流2024年問題」がすでに深刻化しているが、業務委託を含め郵便物の配達要員はさらに足りなくなりそうだ。