「うまい話はこの世にない」の啓蒙ポスターも
悪徳商法の代表的な手口であるネズミ講は、1967年に結成された熊本県の「天下一家の会」(第一相互経済研究所)が発祥だという。
「新会員を入会させればさせるほど配当が上がる」と勧誘し、大学生や主婦など全国から約120万人の会員を集めた。やがてシステムは破綻し、配当を得られない人々が「インチキだ!」と声を上げたことで1971年に問題が表面化。翌年、創始者の内村健一は脱税容疑で逮捕。被害総額は約1896億円にのぼった。
「この事件を受け、1978年にネズミ講を禁止する法律が制定されました。このような事件は、被害を受けた市民が立ち上がることで消費者問題として世に現れ、法律の制定や改正につながっていきます。消費者運動が法律を変える契機となりますが、常にわずかな抜け道を探し出す事業者とのイタチごっこも続いていくのです」(飯田さん・以下同)
その後も“必ず儲かる”という謳(うた)い文句で消費者を釣る「販売預託商法」(事業者が消費者に高額商品を販売し、商品をそのまま預かって運用し、配当金を還元する方法)が大きな社会問題となる。
1980年代半ば、「日本最大の詐欺事件」といわれた豊田商事事件は、「金は必ず値上がりする」と高齢者や主婦ら数万人に吹聴し、現物を渡さずに預かり証だけを渡す「ペーパー商法」で約2000億円もの資金を集めた。事件後、街なかには「うまい話はこの世にない」と啓蒙するポスターが貼られた。
悪質業者は懲りない。数十年後には再び、和牛の預託商法で約7万3000人から約4200億円を集めた「安愚楽牧場」事件(2011年経営破綻)が起きたのだ。
「うまい話」に乗ってしまうのが人間の性。だからこそ、歴史に学ぶ必要がある。