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【老後資金問題から考える新NISAの意義】「こんなお得な制度を用意したのだから、資金不足になるのは“自己責任”」という国からのメッセージ

新NISAは老後資金問題を解決するインフラとして用意された(イメージ)

新NISAは老後資金問題を解決するインフラとして用意された(イメージ)

 年初に新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしてから株式市場も活況を呈しているが、そもそもなぜこうした制度が導入されたのか。金融・人生設計に関する著書が多数あるベストセラー作家の橘玲氏が、新NISAの意義とそのメリットについて解説する。【前後編の前編】

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 2025年にはすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、本格的な「超高齢社会」が到来する。年金や医療など社会保障費の膨張で財政逼迫は避けようがない。

 すぐに実現できる抜本的な解決策があるわけもなく、国がどこまで国民の面倒をみてくれるのか、年金だけでどこまで生活できるのか、老後不安が尽きないのも当然だろう。

「人生100年時代」といわれるが、20歳から60歳まで40年間働いても、100歳まで40年も残る。現役時代に積み立てた年金だけで、同じ長さの老後を不安なく暮らせるとはとても思えない。

 金融庁が2019年にまとめた報告書で、「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」と書いて大炎上したのは、誰もがこの不都合な真実に気づいているからだろう。強い反発の背景には、「老後資金が足りなくなる」と警告する一方で、国が資産形成の「インフラ」を作ってこなかったことがある。その反省もあって、ようやく国民一人ひとりが効率的に老後資産を準備できる制度が登場した。それが「新NISA」というわけだ。

 だがこれは逆にいうと、「こんなお得な制度まで用意したのだから、それにもかかわらず老後資金が足りないというのは“自己責任”ですよ」という国からのメッセージだと考えるべきだろう。

 昭和の日本は60歳の定年を過ぎたら引退し、年金で悠々自適が当然とされていた。その当時は、老後に大きな格差が生じることなど、誰も想像していなかった。

 ところがこれからは、高齢者のあいだで経済格差が大きく広がっていくだろう。運、能力、努力によって年をとるほど資産の差は大きくなるし、定年後に年金だけで暮らすのと、その後も働き続けるのとでも差がつく。こうした経済格差を「差別」だとして、国に是正を求めても意味はない。これが人類史上未曾有の超高齢社会を生きる私たちが置かれた「現実」なのだ。

 では、どうすればいいのか。老後問題とは「老後が長すぎる」ことであり、もっともシンプルな解決策は「長く働いて老後を短くする」ことだ。「生涯現役」で働けば、たとえ60歳から月10万円の収入でも、80歳までの20年間で2400万円になる。これだけで、「老後資金2000万円問題」は解決してしまう。

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