揉めやすい「介護をめぐる方針の違い」
負担の差に加え、揉めやすいのが「介護をめぐる方針の違い」だ。
父の経営する町工場を継いだBさん(男性・60代)は、認知機能が衰え始めた父を施設に入居させたいと考え、離れて暮らす2人の兄に切り出した。
ところが、長兄は「親父は愛着のある工場で死にたいと言っていた。在宅で介護してほしい」と主張。次兄も首肯したが、2人の兄は介護事業者や訪問医を探すわけでもなく、Bさんに工場経営と在宅介護という二重の負担がのしかかった。
「介護の現場では、『金』『時間』『口』がキーワードになります。“お金も時間も出さないのに、口だけ出すタイプ”のきょうだいがいると非常に揉めやすい。そうした事態を回避するには、事前にきょうだい間で介護方針や遺産分割について合意を形成しておくことが大切です」(横井氏)
介護をめぐっては「義理のきょうだい」も絡んでくるので話が複雑になる。たとえば、“長男の嫁”が義父・義母の介護を担うことは決して珍しくないが、仮に要介護の親が亡くなっても、“長男の嫁”は相続人ではないので、遺産分割協議に参加できない。きょうだい間で介護方針などを話し合う際には、相続人になれない“嫁”にどう報いるかも考えないと、禍根を残すことになる。
親の預金の使い込み
親の預金も火種となる。Cさん(男性・60代)のケースでは、高齢の母の介護を実家近くに住む姉が主に行なっていた。
だが母の死後、残された遺産はCさんが思っていた以上に少なかった。姉を問い詰めたが明確な返答はなく、Cさんが弁護士に相談して銀行の取引履歴を取り寄せると、毎月のように大金が引き出されていた──。
夢相続代表の曽根恵子氏が語る。
「親の預金を管理していたきょうだいの“使い込み”が問題になるケースは非常に多い。とくに親の生前に預金の管理状況をきょうだいで共有していないと疑心暗鬼が募り、揉める要因になる。使い込みを認めず逃げ切られたりすると、関係は最悪、絶縁になります」