日経平均株価がバブル期以来となる史上最高値を更新し、投資熱が高まりを見せている。投資情報が数多く出回る一方で、「今から買っても高値掴みになるのでは」と怖がっている人もいるかもしれない。AI(人工知能)ブームと米国株の上昇が見られるなか、我々は何を投資の指針とすればいいのか。2006年に刊行した著書『臆病者のための株入門』がベストセラーとなり、その後も金融・人生設計に関する著書が数多くある作家・橘玲氏が指南する。【全3回の第2回。第1回から読む】
AIに負けないやり方
少子化が加速する日本と違い、世界の人口はまだ増加傾向にあり、市場も拡大している。そんなグローバル市場の成長に投資するもっとも簡単な方法が、世界の株式市場の縮小コピーである「世界株インデックスファンド」だ。
1980年代に完成したファイナンス理論は、あらゆる投資戦略のなかで「株価指数に連動するインデックスファンド」が、リスクに対するリターンの比率(投資効率)がもっとも高いことを数学的に証明した。それに対して、ファンドマネージャーが運用するアクティブファンドは手数料が高い分だけ、平均的にはインデックスファンドよりパフォーマンスが低くなる。
これは運用会社にとってきわめて“不都合な事実”だが、半世紀たっても反証できていない。経済学的にもっとも正しい投資法は、世界株インデックスファンドに長期投資することなのだ。
ちなみに、短期の売買を繰り返すデイトレードを好む人もいるが、投資判断をAIがするようになって、この方法は未来がないと思っている。市場から膨大なデータを集め、それを瞬時に解析して、利益を最大化する最適解を学習することは、AIがもっとも得意とすることだ。人間のトレーダーはとうていかなわないだろう。
ただし、AIは魔法ではないから、なんでもできるわけではない。市場は複雑系なので、最速のコンピュータでもすべての要因を計算する能力はない。どれほど賢いAIも、数年後はもちろん、数か月後の株価を予測することもできないだろう。
だとすれば、人間がAIに勝つには「長期投資」だ。臆病者が資産を増やす方法として、「長期のインデックス投資」を超えるものはない。