中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

【実録】昭和末期のサラリーマン、今思えば“不適切”な働き方 「家庭を顧みないのがカッコイイ」

1980年代の国鉄新宿駅の通勤ラッシュの様子(時事通信フォト)

1980年代の国鉄新宿駅の通勤ラッシュの様子(時事通信フォト)

 ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、1986年から2024年にタイムスリップしてきた中学の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が主人公で、両時代のコンプライアンス意識の違いを描き出して話題になっている。中高年世代にとっては「あった、あった」、若者世代にとっては「考えられない」と思うような内容も少なくないだろう。実際に昭和末期の学校教師やサラリーマンはどんな感じだったのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(1973年生まれ)が振り返る。【前後編の前編】

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 ドラマの舞台となっている1986年、私は中学1年生でしたが、阿部サダヲ演じる小川市郎みたいな熱血教師はたくさんいましたよ。いや、変人教師かもしれません。体育教師でいえば、「一徹」と呼ばれる教師がすごかった。『巨人の星』の熱血父ちゃんである星一徹にかけたあだ名ですが、自身がハードル選手だったことから後進を育てたかったのか、約2か月、体育の授業はすべてハードルだったのです。いや、一番優秀な生徒だけスカウトしたり、陸上部で鍛えればいいでしょ? なんでオレら鈍足まで、ハードルの成績上げようとするの? と子供心ながら思いました。

 もう一人、女性の体育教師・X先生がいたのですが、彼女はパンチパーマでガタイがいい。根は優しい教師ではあったものの、キレると生徒の尾てい骨に正確なキックを入れてくることで知られていました。そうしたことから生徒達の間では、「X先生は、全日本女子プロレスに所属していた過去があり、リングネームは『キラー・X』だった」と、まことしやかに噂されていました。当然ガセネタではあるものの、あのキックをくらった生徒からすればそれだけX先生は恐怖の存在だったのです。

 他の教師にしても、昭和的逸材は揃っており、国語のY先生はなぜか常にヨネスケが『突撃!隣の晩ごはん』で使っていたような巨大しゃもじを常に持ち歩いている。そして悪さをした生徒を廊下に立たせ、勢いよく尻を叩いていた。野球部の顧問も「尻バット」と称し、エラーをした部員の尻を金属バットで叩いていました。しかし、生徒達もこれを「体罰」として問題視することはなく、「アチャー、やらかしたから仕方ねぇな……」と受け入れていました。

 暴力的ではないものの、理科のZ先生は東大出身でムツゴロウさん(畑正憲氏)と同級生だったようで、3回の授業に1回ほどはこう言いました。

「世の中には天才が3人いる。一人はアルベルト・アインシュタイン、もう一人はトーマス・エジソン、そして私、Zである」

 こうして生徒に同意を求めるのです。今だったら教育委員会に通報されそうな教師も多かったように記憶しています。

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