美容・医療ジャーナリストの海野由利子さんも「長らく常識だった、“美容を好むのは40才まで”という世間の空気に変化が生じている」と声を揃える。
「私が美容の世界に足を踏み入れた1980年代、“女の人は40過ぎたら化粧はしないよね”という声が主流であり、当時の化粧品メーカーが行っていた『ファンデーションを使いますか?』などのアンケート調査結果をひもとくと、その多くは40代までのデータしか取っておらず、その上の世代は“対象外”とされ情報も商品も少なかった。
しかし現在は90代でも日常的にスキンケアやメイクをするのが珍しくなくなり、とりわけテレビの通販番組では高齢者のモデルを起用して、シニア向けのコスメやスキンケア商品を宣伝し、人気を集めています」(海野さん)
その背景にあるのが、止まらない高齢化とそれに伴う医療や美容の飛躍的な進歩だ。美容ジャーナリストの近藤須雅子さんが解説する。
「ここ半世紀、世界的に見ても高齢者の人口比率は増加の一途を辿っており、その層に向けた医療技術が大きく発展してきました。その結果、人生100年時代の到来とともに、年を重ねても心身ともに健康なシニアが増え、彼らがより楽しく、心地よく暮らすことができるサービスが充実するようになった。その中でも美容は、大きな割合を占めていると言えます」
とりわけ、医療技術を用いた美容分野の発展は著しいと近藤さんは続ける。
「例えば以前はアザなどに使われていたレーザー治療法で、シミ取りや脱毛を行うのも当たり前になっています。また、出産したら体形が崩れたり高齢になったら髪の毛が薄くなったりすることを、昔は誰もがあきらめて受け入れていましたが、体形管理や薄毛への対処法も、美容と医療のシンクロによって次々に新しい方法が生まれています。年を重ねても美しくいられることが、世の中の“常識”になったと言えるでしょう」