親の介護が必要になり、きょうだいが力を合わせて動く――そんな家族介護が理想と考えている人もいるかもしれないが、現実には逆に兄弟仲が悪くなる例も少なくない。介護アドバイザーの横井孝治氏は「実は介護を受ける側である“親の態度”が兄弟姉妹の仲を割く場合もあります」と語る。その実例と対策を紹介しよう。
東京都中野区で親の介護をする男性・Aさん(52)は次のようにこぼす。
「最近、弟の態度が変なんですよね。私に対して妙にケンカ腰というか。母親の介護が始まる前はそんなことなかったのに……」
Aさんの母親(78)は、Aさんと同じ中野区で一人暮らしだ。2年前に転んで大腿部を骨折し、しばらく入院。それからすっかり弱ってしまった。今年に入り、母親は要介護2に認定され、訪問介護のサービスを利用するようになった。近所に住むAさんも毎日のように母親の自宅を訪ね、世話をしている。3歳離れた弟のBさんは関西の企業に就職し、そのまま関西で家庭を持っているため、Aさんが母の介護を一身に引き受けているのだ。
「母の介護はもちろん大変です。でも、弟は関西だし、私がやるしかないと思って頑張っています」(Aさん)
弟のBさんは年に数回、ひょいと親元を訪ねては来るものの、すぐに関西に戻ってしまう。介護の負担はAさんに集中する。
「なのに、弟からは感謝の言葉どころか、『母さんの年金でごちそう食べてるんだろ』みたいな嫌味を言われることもあるし、最近は母まで私に対して攻撃的になることもあるんです」(Aさん)
よかれと思ってやっている親の介護なのに、ストレスは募るばかり。ほとほと困っているという。