中古マンションは余計なコストがかかっていない
また、最近のように建設費が高騰すると、マンションの製造コストが大幅に上がり、販売価格が上昇します。デベロッパーのコストも上昇していますから、彼らが上乗せする利益分も上がり、販売価格はさらに高くなります。
いっぽう、中古マンションはすでに完成した建物ですので、昨今の建設費の高騰とは無関係です。また、購入の際に仲介手数料がかかりますが、法律で売買価格の3%が上限とされており、新築マンションでのデベロッパーの取る利潤(20~30%)よりもはるかに低い水準です。つまり中古マンションは、余計なコストがかかっていない「相場」で買うことができるのです。
また、建設費が高騰すると、デベロッパーは自分たちの利益を削らずに、コストを抑えようとします。具体的には、専有面積を小さくする、キッチンやユニットバスなどの住設機器のグレードを下げる、壁クロス・窓ガラス・サッシなどをチープなものに変更するなど、苦肉の策を打ち出します。さらに、目に見えない部分でもコスト削減に励みます。
私が、ある街で偶然に建築中のマンション現場の前を通りがかった時のこと、業界でも名の通ったブランドのマンションで、外壁工事を行なっていました。最近のマンションはタイルをその場で打ち付けるのではなく、事前に工場で張り付けたボードを外壁に張るのですが、その様子を見て、驚愕しました。「う、うすい!」と、思わず独り言をしてしまうほど「うすうす」のタイルだったからです。施工技術が向上して、薄いタイル壁の製造・施工ができるようになったのでしょうが、地震で歪むのではないか、台風などの風雨の影響でタイルの劣化が進むのではないかと心配になりました。
ハード面ばかりではありません。「住民の質」を見極めることも、中古マンションなら簡単にできます。具体的には、管理組合総会の議事録などを取り寄せる、過去の建物修繕履歴をチェックする、管理費や修繕積立金の滞納状況を把握することで住民の質を推測できますし、同時に、建物の思わぬ問題も判明したりします。
業界には「景気の良い時に建設した中古マンションを買え」との格言があります。景気の良い時期は、十分なコストと余裕のある工期で造られるため、外装にも内装にも十分にお金をかけているからです。
新築時点で、同じエリアの他の物件よりも高価格だったマンションも狙い目です。コストをかけたぶん、販売価格も高く設定されていたのでしょうが、中古になれば相場で買うことができます。また、ターゲットとするマンションの新築時から現在までの相場と、同じエリアの相場を比較すれば、資産価値を推し量ることができます。
新築マンションはデザインはもちろん、建物も設備もすべてが新しいため、見た目はとてもよく映ります。しかし、奇抜なデザインや、ただ流行を追いかけただけのものは“賞味期限”も早いと言われます。いっぽう、シンプルで落ち着いたデザインはある程度、築年数が経っても古びることはありません。
このように、中古マンションは、自分の目でハードもソフトも資産価値も確かめたうえで、希望する住戸を相対で取得交渉できますから、資産としても、住むにあたっても、満足度の高い買物になる可能性が高いのです。