マンション購入で自分は得したのか、損したのか――。買った後に、その損得勘定について考える人は少なくないだろう。その明暗を左右するのが「時期」と「立地」だが、それによって実際にどのくらい得、または損したのかといった明確な情報は少ない。不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティングを行うスタイルアクト株式会社代表取締役の沖有人氏が、試算したデータをもとに解説する。
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「自宅マンションを購入すると儲かる」というのは今や当たり前の話である。これを知らない人は大損をしている。その点については、昨年12月に配信したコラムの〈持ち家と賃貸どちらが得か? 直近10年間では「3000万円」の差も〉に書いたとおりだ。さらに、この3000万円の差は「いつ・どこにマンションを買ったか」でも大きく変わってくる。
私たちが運営している無料会員制サイト「住まいサーフィン」では、毎年年始の恒例企画として、2003年以降に竣工されたマンションの新築時の価格と中古売り出し価格を住戸単位で比較し算出した「市区別×竣工年別中古マンション価格の値上がり率(騰落率)」を発表している。自分が購入したマンションの竣工年と立地に該当する箇所の騰落率をクリックすれば、おおよそのマンションの“偏差値”が「大吉」、「中吉」、「凶」などおみくじ形式で判定される仕掛けだ。多くの人は、自宅マンションは1つしか買えない。その1つが成功か失敗か、それを判定するわかりやすい指標となるだろう。
この騰落率から、中古マンションの資産性の“実績”が判明しているので、新たに売り出される新築マンションの資産性もある程度評価できる。つまり、新築や中古マンションを買う前から、その実現益を見越すことも可能となるのだ。例えば、3年後に竣工する新築タワーマンションを買った人が、転居までの間に住むための中古マンションを買う場合でも、「騰落率」という値上がりしそうなマンションの“基準” を知っていれば、新築と中古、どちらを購入した場合でも損せずに済むのである。
マンションが値上がりするかどうかは、「いつ」「どこに」買ったかで決まる。「いつ」買えばもっとも得だったかの答えは、竣工した年で言えば2013年のアベノミクスの経済政策の1つである金融緩和が始まった当初である。金融緩和で市場にたくさんのお金が溢れると、担保が取れる不動産に資金が流れやすく、金利が下がることで不動産価格も上昇する。実際アベノミクス以降、マンション価格は上昇しているため、当時は非常に割安だったと言えるだろう。
「どこに」買えば得だったかは、やはり都心が有利で、都県単位で平均騰落率を見ると、東京都区部、神奈川県、埼玉県、東京都下、千葉県の順に値上がり幅が大きい。都区部の中でも都心3区(千代田区・中央区・港区)は24.1~30.6%値上がりしており、2003年以降いつ購入してもプラスで推移していた。この3区のほか、新宿区、文京区、渋谷区、台東区、江東区、品川区でも17~25.3%の値上がり率となっており、これらの地域では、どのタイミングで買っても値上がり率はプラスで推移している。