労働時間を管理するために必要なタイムカード。従業員が何時間働いたのかを確認するのは、雇用者にとっても労働者にとっても大切な作業だが、いたずらに就業終わりのタイムカードを押すのを引き延ばすとどうなるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
会社で管理職をしています。パート従業員のAさんは、仕事開始時間の1分前に来て、仕事終了後はダラダラと過ごし、タイムカードをなかなか押しません。ほかのパート従業員は開始時間10分前には来て仕事の準備をし、仕事が終了するとさっさと帰ります。Aさんに速やかに帰るように言っても守ってくれません。ダラダラ過ごしている時間の分を給料から差し引いても問題ないでしょうか。(神奈川県・48才・会社員)
【回答】
賃金は勤務時間中の労働に対する対価ですから、働かない時間分の給与を控除することは筋の通った話です。「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。
遅刻や早退をしたり、あるいは休憩時間以外の中抜けの時間など(以下、欠勤時間)はノーワークですから、欠勤時間分の賃金を差し引けます。これらの場合は、職場にいない時間を把握できますから、控除すべき労働時間数が計算でき、賃金から欠勤時間分の金額を減額処理することが可能です。
ただし、その前提として給与規定などで時間割給の算定方法や欠勤時間分の控除を定めていないと計算が難しいだけでなく、欠勤控除がされない条件の労働契約と反論される可能性もあります。
労働者が、職場にいても勤務時間中に私用をした場合は、その間の時間を特定して減額対象にすることも考えられますが、実際にはその時間を争いなく確定することは難しい上、職場での拘束時間中ですから減額は困難でしょう。