不動産市場が銅需要に大きな影響を与える
需要要因以外には、構造的に品質の高い銅鉱山(埋蔵量)が減少していること、厳しい環境対策によって銅精錬設備の増強が容易ではないことなども挙げられる。将来の価格に与える影響としては、むしろこの供給制約の方が大きいのではないかとみる本土アナリストたちも少なくない。
もっとも、こうした分析において抜けている部分が一つある。それは銅の需要に大きな影響を与える不動産市場の見通しについてである。
3月18日に発表された月次統計をみると、1、2月(春節の影響を受けない2か月合計のデータ)の全国不動産開発投資は9.0%減で、2023年の9.6%減、2023年12月推計値(累計データから推計)の12.5%減よりは回復している。2月末の商品不動産在庫面積は15.9%増で、2023年12月末の19.0%増よりは減少している。とはいえ、1、2月の商品不動産販売面積は20.5%減で2023年の8.5%減、12月推計の12.7%減を大幅に下回っている。販売額では更に厳しい結果となっている。
中国はバブル化した不動産価格を供給、需要の両サイドから強くコントロールすることで安定させようとしている。20年来のバブル拡大をようやく抑え込むことができた状態である以上、もう一度、バブルの拡大を許すようなことはないだろう。加えて、いわゆる社会主義化によって価格下落を止められるのかどうか不安な面もある。
今後の銅価格の見通しにおいて、中国不動産市況の動向が、最大のかく乱要因となりそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。