「緩和修正=株安」ではなくなっている
日銀は3月18日、19日に行われた金融政策決定会合で、2016年から続けてきた「マイナス金利政策」を解除することを決定しました。こうした金融政策の緩和修正が株価にマイナス影響を与えるという考え方は、もはや古いものとなりつつあります。
2022年12月、黒田総裁の下で日本銀行はイールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化を発表し、マーケットに一時的な波乱をもたらしました。この出来事から、日銀の金融緩和の修正が株価の下落を招くというイメージが払拭されない投資家もいるようです。
しかし、植田和男総裁のもとでの日銀は、緩和政策の修正を数回経験しつつ、会合の数日前からマーケットとコミュニケーションを図ることで、市場が徐々にその修正を織り込むことに成功していました。マイナス金利解除が報じられた直後も、日経平均株価は底堅く推移しています。
金融政策の転換は、歴史を振り返っても、株価にとって重要な転換点となり得ますが、中央銀行関係者も市場を混乱させたいわけではありません。安定した株価推移を目指しており、今のところ植田総裁によるマーケットとのコミュニケーションは成功していると言えます。マイナス金利解除が株安の原因となるという見方は見直されるべき時が来ているのかもしれません。
米国の物価見通しには要警戒
もちろん、マーケットにリスクが全くないわけではありません。特に、米国株式市場が今後どう動くかは、日本株にとっても影響が大きいでしょう。
最近の経済指標によると、市場の予想を上回るインフレ率が複数確認されており、利下げのタイミングが遅れる可能性が指摘されています。もしインフレがさらに加速すれば、世界的にも高水準にある株価が調整入りする可能性も否定できません。
そうなると、日銀もマイナス金利政策の解除後に政策金利の引き上げを検討することにもなるかもしれません。
株式市場は、時に突然その表情を変えることがあります。相場の格言「コツコツドカン」にもあるように、株価が上昇するのには時間がかかるものの、下落するときはそれよりも速いというのは、投資家なら誰もが認識すべき現実です。
今、私たちは大きな転換期を迎えています。長年にわたるデフレマインドを一新し、インフレを起点とした健全な経済の好循環を理解することが求められています。この変化の波に乗るためにも、適切なリスク管理を心がけながら、今後のマーケットの動向に注目し続けましょう。
【プロフィール】
森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。