ライブハウスでは、日々、多くの若手バンドが切磋琢磨している。かつてはバンドマンといえば、音楽のためにすべてを捧げ、泥臭くも破天荒に生きている若者たちというイメージを持つ人もいたかもしれない。ところが、SNS全盛期の現在、その実態は大きく変わりつつあるという。
実力よりも「バズる」かどうかが大事
下北沢を中心に、3ピースのロックバンドで活動を行っているというベーシストの男性・Aさん(22歳)が、本音を語ってくれた。
「僕らは高校の軽音サークルからの同期で、ストイックさを信念に活動を続けてきました。しかし、今は音楽にマジメなだけではダメなんです。結局、地道に練習して、ライブをしても動員はなかなか増えません。逆に言えば、曲のクオリティが低くて、演奏が下手であっても、SNS上で目立つことをしているバンドは、勝手に動員もフォロワーも増えていく。
実際に僕らの同世代でも、バンド界隈で評価は低いのにSNSでバズって、フォロワーが1000人くらいから、1万人規模に増えたバンドもいます。そういうのを見ていると、やはり複雑な気持ちになります」(Aさん)
Aさんと同じバンドでギターを担当しているメンバー・Bさん(23歳)は、こう続ける。
「正直、僕はSNSをやるためにバンドをやっているわけじゃありません。もっと実力で勝負したいのに、今はそういうバンドが世に出る機会が少ないと思います。たとえば、下北沢界隈で同業者に評価されたとしても、SNSで注目されないとまったく日の目を見ることがない。
どんな形であれSNSで目立ったバンド、あるいは『なんとなくオシャレ』『なんとなくエモい』といったブランディングが上手いバンドには、レーベルや事務所がつくケースが多い。それを見て何度も心が折れそうになりました。SNS社会の功罪だと思います」(Bさん)