傷病手当金の支給期間後に難題が待ち構えていた
東京都福祉保健局の調査(2019年)によれば、がんの診断後に収入が減った人は49.4%。
たとえ傷病手当金で一定額の収入が補填されても、経済的ダメージは避けられない。例えば月収35万円の場合、傷病手当金の支給額は毎月約23万円。ボーナス分は丸々無くなるので、住宅ローンのボーナス払いなどを利用している人には深刻な問題だ。
1年ほど前に初期のすい臓がんが発覚した50代男性C氏が言う。
「手術で1か月近く入院。高額療養費制度を利用してもトータル50万円ほどの持ち出しとなりました。その支払いは乗り切ったものの、退院後も抗がん剤治療が続くので長期休職せざるを得ず、傷病手当金を申請しました」
月収50万円の男性が受け取る傷病手当金は月約30万円。貯金もあり、切り詰めれば生活はなんとかなるが、傷病手当金の支給期間(1年6か月間)後に難題が待ち構えていた。
「4500万円で購入した自宅のローン残債は1800万円、返済額は月19万円でした。職場復帰の目処が立たないなか、収入が途絶えたら払い続けられない。一時は売却も覚悟しました」(同前)
C氏は返済額を減らすため銀行に相談。その結果「今後半年間は利息分1万9000円のみの支払い」を提案され当座をしのいだが、「猶予期間後の返済額は21万円になる予定です。現在の体調では以前のように働くのは難しく、不安は拭えません」と頭を抱える。
(後編につづく)
※週刊ポスト2024年4月5日号