年度の変わり目によく目にするのが「合格体験記」だ。これから試験に挑む受験生の参考になるのはもちろん、単なる読みものとしても興味深いが、そこに書かれている内容は、どこまで“真実”を表しているのか。合格体験記が世に出るまでには、さまざまな人たちの思惑が交錯している。
今から20年以上も前、高校の先生に合格体験記を頼まれたTさん(40代/女性)には、いまだに苦い思い出が残っている。
「第1志望の大学に合格したその日に、担任の教師から自宅に電話があり、合格体験記を書くように頼まれました。その高校からW大学の合格者が出たのは数年ぶりだったので、指名されたというわけです。
私は深く考えずに、勉強は塾が中心だったこと、帰国子女だったので英語の勉強はほとんど必要なかったことなど、実際の勉強事情を書きましたが、教師からは書き直しを命じられてしまいました。学校側にしてみれば、学校の勉強がまったく役に立っていない書きっぷりだったので、期待していた体験記と違ったのでしょう。でも『ウソは書けない』と突っぱねてしまい、書き直しもスルー。結局ボツになり、気まずい雰囲気のまま卒業しました」
学校や塾から発信される合格体験記には“検閲”が入りがちだ。原稿の不都合な部分をばっさりカットされたという人も少なくないようだ。Fさん(20代/女性)もその一人。
「ウチの高校は世間的には進学校と呼ばれていますが、実際には受験対策はなきに等しい。どの科目も進度が遅く、教科書は最後まで行かずに終わりますし、“選択する生徒が少ない”という理由で、政治・経済や地学の授業はありせんでした。なので、その不平不満を書き連ねたところ、冊子には科目ごとの勉強法を書いた部分だけが掲載されていました」