巨大な消費市場と世界最大の製造業規模
2つ目は巨大な消費市場を持つ点だ。中国は米国の69.8%(2022年名目GDP、国連のデータより計算、以下同様)、日本の4.2倍の経済規模があり、相対的に高い成長を維持している。大きな潜在需要があるということは、競争に勝ち抜くことによって得られる利益の分け前が大きいことを意味し、巨額の開発投資が可能となる。量産効果からコスト競争力も高い。
3つ目は世界最大の製造業を持つことだ。経済規模では中国は世界第2位だが、製造業に限ればその名目GDPは米国の1.9倍、日本の5.9倍に達している。規模が大きいだけでなく、産業のすそ野は広く、フルセット型の産業構造となっている。eVTOLの開発に絞れば、共通の部品が多い自動車産業の生産台数をみると、中国は米国の2.7倍、日本の3.4倍に達している(2022年、OICAデータより計算)。開発のネックとなっているのは電池だが、その基礎となる電気自動車用電池では中国が生産量でも、開発力(資金力)でも世界のトップ水準だ。自動車よりもさらに構造が似ているドローンについても同じことが言える。分業体制によるモノづくりといった観点からすれば、オール中国の産業競争力は強力だ。
中国経済といえば不動産不況に関する報道ばかりが目立つが、バブル崩壊後の日本と比べて決定的に違う点、国家主導で新しい産業が育っている点にも注目すべきだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。