電気自動車の生産量、普及率において世界をリードする中国だが、“空飛ぶクルマ”の実用化においても最先端を走っているようだ。峰飛航空科技は2月27日、自社で開発した電動垂直離着陸機(eVTOL、名称は盛世龍)が世界で初めて海を渡る飛行に成功したと発表した。
深セン市蛇口に設置された発着基地から珠海市九洲港のふ頭まで往復で100kmを超える距離、道路を走れば片道2時間半から3時間かかるところを20分で飛行した。深セン市、珠海市は中国が進める香港・マカオ・広東省グレーターベイエリア開発の中核となる都市である。旅客の潜在需要は大きく、運航運営を図る企業グループとともに2026年の商業化を目指している。
同社の説明によれば、盛世龍は電動モーターを使用しており、一回の充電で250kmの飛行が可能。最大積載人数は5人(操縦者1人、乗客4人)、最大積載荷物重量は350kg、走行速度は200km/h以上、ホバリング時の騒音値は65デシベル(地下鉄の車内がおよそ80デシベル)だ。コアモジュールは100%国産化されている。販売価格は未定だが、少なくとも同じレベルのヘリコプターよりは遥かに安くなるそうだ。
中国では現在、“空飛ぶクルマ”の実用化を巡り、熾烈な競争が繰り広げられている。NASDAQ上場の億航智能は2023年10月に世界で初めて旅客輸送無人航空機の商業運航を行うことができる型式証明を取得しており、2024年には観光用として商業運航を始める計画だ。ほかにも、小鵬汽車傘下の小鵬匯天、吉利汽車グループ傘下の沃飛長空などが、商業運航に向けて準備を進めている。