もちろん、このようなサイバーセキュリティの法規制は、2024年以降に継続生産される車に対しても適用されます。誕生してから8年経過したロードスターですが、いまもグローバルで発売される人気商品であることから、対象となります。中には「この際にフルモデルチェンジを」という声があったのも事実です。
一方で、鮮度を失っていないデザイン、軽量を活かした切れのいい走り、オープンとしての爽快さなど、ロードスターならではの個性で今も世界の人たちを魅了しているという現状があります。メーカーたるマツダからすれば「もう少しNDロードスターのままで」という、企業としての方針や事情も十分に理解できます。
装備充実で重くなったが
今回のサイバーセキュリティ対策によって電気/電子アーキテクチャーが刷新されたことによって、当然のようにADAS(先進運転支援システム)も進化しました。人間で言えば血液や神経系統をすべて入れ替えたような、一大変革が施されたわけです。これでしばらくは「時代との整合性を持った安全安心」を装備したライトウエイトオープンとして生きていけることになったわけです。
ただし、1点だけ「装備を進化させたことで重量が増えた」という指摘もあります。確かに全グレードで、最大20kgほど重くなっています。これまで車両重量1トンを切る「S」というモデルを揃え、人気となっていたのですが、今回の変更により車重は1010kgに。軽自動車や一部のコンパクトカーを除けば1トン切りは珍しい存在ですが、それでもロードスターの軽さは群を抜いています。
実際にエンジンをスタートさせ、軽やかなサウンドとともに走り出してみると、軽快な走りがもたらしてくれる爽快感は、まったく色あせていません。ステアリングフィールの心地よさ、サスペンションの路面追従性の良さなどがむしろ向上している印象です。今回の電気的な進化を好機と捉え、エンジンのフィール等も向上させるという「細やかな変化」を、どんどん実現する姿勢に、マツダらしさを強く感じます。気が付くと「これこそライトウエイトオープンの気持ち良さ」と改めて納得しながら爽やかな走りを味わい、自然と笑顔になっていたのです。
最近、バッテリーを大量に搭載し、重量級となったボディを、モーターの強烈トルクに頼って加速するBEV(バッテリーEV)の走りに慣れて忘れていた感覚が蘇ってきました。「軽さこそスポーツカーの正義」ということを思い出させてくれるのです。加速でもブレーキングでもコーナリングでも、さらには経済性でも「軽さは正義」である事は改めて不変だと感じさせてくれました。確かに今回の変身によって価格は約289万~430万円となり、これまでよりも6~9%の価格引き上げになってしまいますが、それでもこの走りがあれば何とか納得できると思いました。
あくまでも予想ですが、次なるロードスターが出るとすれば、電動化の可能性があります。BEVでなくともプラグインHVなども考えられるのですが、重量級ロードスターの走りが、どんなものになるのか? どこか期待しつつも、このままでいいよ、という気持ちもあり、ライトウエイト好きには複雑な心境です。