別掲の日本地図は、今世紀末の「満開予想図」だ。
「ご覧のように、関東から西日本にかけての広い範囲でほぼ同時期に一斉に開花します。しかも、その開花日は2082~2100年の19年平均で3月25日~4月1日です。4月1日の等値線のところが4月1日開花で、その内側はそれより前の開花となります」(伊藤さん・以下同)
桜がきれいに咲くには「冬の寒さ」が必要
九州地方の地図には「満開にならない年がある」ことを示す丸印や、「開花しない」を示す星印が点在する。
これは、2082~2100年に九州を中心に「開花しても満開にならない年がある地域」や「開花しない地域」が出現することを意味している。
温暖化で桜の開花が早くなると思いきや、むしろ開花が遅れたり、満開にならなかったり、開花もしなくなるのは一体なぜなのか?
「それは桜がきれいに咲くには『冬の寒さ』が必要だからです。桜の開花には別掲のイラストの5つのプロセスがありますが、このうち3番目の休眠打破には冬の寒さが必要で、それがないとスムーズに進まないのです」
したがって今世紀末の南九州などでは寒さ不足で休眠打破が進まず、開花が遅れたり、満開にならなかったり、開花しなかったりする地域が現れる。
「これからは紅葉が冬の風物詩になる。また、夏の虫捕りや海水浴は暑さで敬遠される。日本の季節感や歳時記が大きく変わり始めています」
【プロフィール】
九州大学名誉教授・伊藤久徳さん/元福岡市科学館館長。理学博士。専門は気象学。九州大学理学部教授を経て定年退職。現在は九州大学名誉教授。
取材・文/北武司 イラスト・作図/勝山英幸
※女性セブン2024年4月11日号