どの状況でいつまでに何の手続きが必要かを整理したのが「『相続登記』の手続きフローチャート」だ。
「シンプルなのは遺言書に基づいて親名義の不動産を相続する人、遺言書がなくても相続人同士の遺産分割協議が迅速にまとまって親名義の不動産を相続する人。相続発生から3年以内に相続登記をします」(旭氏)
相続登記の手続きは、遺言書があると手順は簡略になる。
時間を稼げる救済制度も
ただし、遺言書があっても面倒なのは相続する不動産が親名義ではなく祖父母や曾祖父母のままといった場合だ。また、遺産分割協議が長期にわたり揉めるトラブルもある。司法書士の野谷邦宏氏が言う。
「相続登記には“権利のある相続人全員が捺印した遺産分割協議書”が必要です。土地が曾祖父名義のままなら、曾祖父の配偶者や子供たち、祖父の配偶者や子供たち……と膨大な人数が権利を持つことに。不仲な相続人同士で遺産分割協議がまとまらないなど、“3年の期限に間に合わない”ことも想定されます」
遺産分割協議書への捺印や相続放棄の意思の確認などに時間がかかる状況で活用すべきなのが、同じく4月にスタートした「相続人申告登記」だ。3年以内に手続きすることで、いったんは相続登記の義務を果たしたとみなされる。その後、遺産分割協議がまとまってから相続登記をすればいいので“時間稼ぎ”になる。
名義変更のルールが厳格になる一方、審査に通れば相続した不要な土地を国に渡せる「相続土地国庫帰属制度」が昨年4月に始まるなど、助けになる仕組みも登場した。
相続手続きのなかでも、実家をはじめとする不動産は“鬼門”だ。トラブルを想定して備え、新ルールに対応した手続きを進めなくてはならない。
※週刊ポスト2024年4月12・19日号