4月1日より「相続登記の申請義務化」がスタートした。これまでは家や土地といった不動産を相続しても、その所有権が移転したことを登記する名義変更(相続登記)は任意だった。それが、期限内に名義変更をしないと10万円以下の過料を科されるようになる。義務化以前は、相続した人が不要な不動産を放置して所有者不明の土地が増えていたため、国が対策に乗り出したわけだ。
相続登記の期限は、これから相続する人なら不動産を相続で取得したことを知ってから3年以内、4月1日より前にすでに相続している人は2027年3月31日までとなる。
相続が発生すると相続財産の確認や遺産分割協議(遺言書がない場合)、必要な人は10か月以内の相続税の申告・納付など多くの手続きが必要だが、そこに相続登記が加わったのだ。
相続に詳しい税理士・公認会計士の木下勇人氏は「遺産が基礎控除の範囲に収まるなど、相続税を申告する必要がない人ほど、相続登記の義務を見逃してしまうリスクが高いのではないか」と危惧する。
「遺産が多くて相続税が発生するケースというのは、国税庁の発表では全体の約9%に過ぎません。つまり、9割の人にとっては、相続があっても相続税は無関係です。相続税が発生する人の場合、被相続人が亡くなって10か月以内の申告・納付が必要なので、その流れで“遺産に不動産があるから相続登記もしなければ”という意識になりますが、相続税が課税されない人は申告不要なので、手続きが必要と認識しにくい。見逃してしまうケースが相次ぐ可能性があります」
相続税には「3000万円+600万円×法定相続人数」の基礎控除がある。母と子2人が相続人で、遺産が父の残した評価額2000万の自宅とわずかな預金のみ、といったケースでは相続税は発生しない。ただ、そうした場合でも「相続登記」はしなくてはならないので、注意が必要となるわけだ。