厚生年金に40年加入したサラリーマンの年金額は、継続雇用で定年後に長く働いても頭打ちだ。年金額が少し増えても支払う保険料で相殺され、「ならば」と給料を多く稼げば年金が支給停止されるあくどい仕組みまである。だからこそ、妻(夫)の年金を増やすことが重要になる。
今年の年金改正では、厚生年金の加入要件が拡大され、その妻の年金も標的にされている。
サラリーマンの夫に扶養されつつパートなどで働き、年金保険料を納めなくても国民年金の受給資格が得られる「第3号被保険者」を厚生年金に強制加入させて保険料を払わせようというのだ。
第3号の妻には「106万円の壁」がある。社会保険に加入義務のある従業員(以下、従業員)101人以上の会社で働き、週20時間以上勤務するか、月8万8000円(年間約106万円)以上の収入がある場合、第3号を外れて厚生年金に加入しなければならない。年収130万円以上なら企業規模にかかわらず、社会保険加入が義務付けられる。そのため、壁を越えないようにしてきたケースが少なくない。
だが、賃上げでパートなどの名目賃金が上がり、収入抑制も限界になってきた。今年10月からは厚生年金加入の対象が「従業員51人以上」の企業に拡大され、年金改正でさらなる拡大が検討されているのだ。こんな“取られ損”のケースもある。社会保険労務士の蒲島竜也氏が語る。
「全国的に最低賃金が引き上げられ、これまでと同じ時間働いても壁を越えるケースが増えています。厚生年金に加入できれば年金額が増えるが、従業員51人未満の企業では、年収が130万円を超えて週の勤務時間が20時間以上30時間未満なら、第3号から外れるのに会社の厚生年金や健康保険には加入できない。現在の会社が51人未満で社会保険に入れないなら、フルタイム勤務ができて厚生年金に加入できる会社に転職を考えてもいい」
どうせ保険料を払うなら、厚生年金に加入してバリバリ稼ぎ、年金を増やす選択が有力になる。