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「改憲なら第8章(地方自治)を論じよ」と大前研一氏 小選挙区制が生んだ“課長クラスの議員”に国家戦略は語れない

 今後の日本の統治機構を考える上では、政治の劣化を招いたこの小選挙区制の存廃論議を避けて通れないはずだが、今のところ選挙制度に関する議論の多くは「一票の格差」や「合区解消」といった問題ばかりだ。

 これも、企業経営に置き換えて考えるとわかりやすい。たとえば、全国規模で事業を展開している大企業の場合、まず会社全体の戦略や長期目標があり、大きなビジネス領域や地域ごとに事業部や本部を組織して、戦略・目標に合わせた経営を行なっていく。その組織の最小単位として、“課長や係長などの管理者の下に何人の社員を置くのが適正か”を考えることを経営用語で「スパン・オブ・コントロール(SOC)」と呼ぶが、小選挙区制に関して出てくる議論はまさにこのSOCと同じレベルの問題なのだ。

 このアナロジー(類推)を使えば、小選挙区で選ばれる国会議員は、大企業で言えば課長や係長クラスの存在にすぎないということになる。465人の“課長”が永田町に集まって烏合の衆と化しているのが今の国会なのであり、“課長クラス”の人間が「徒党」を組んで議論しても、国政レベルの戦略や対策が出てくるはずがないだろう。

 岸田首相が本気で改憲に取り組もうと考えているなら、こうした統治機構の刷新に関する議論を避けては通れないはずだ。このままでは日本は立ち行かなくなる(=倒産する)という危機意識を国民が共有することで、憲法改正の現実味も出てくると思うのである。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2024年4月12・19日号

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